Yさんは私の陶芸教室に車で1時間40分もかけて通ってくる女性です。
毎週水曜日と土曜日の午前9時から夕方5時まで1回も欠かすことなく通ってもう2年近くになります。
冬は寒くて大変でしょう、との問いに「車の中は暖房がきいているし、きょうも1日がんばるぞ、とカラオケテープに合わせて歌っている間に、いつの間にか着いている。」と全然苦にならないようです。
現在ご主人と二人暮らしで、陶芸窯やその他道具一式も揃えているのですが年4,5回開催される陶芸展出品用の大型作品の創作、釉薬の勉強、をしたいとの理由でわざわざ指導を受けにきています。

 Yさんが当教室に見えるようになって指導する側の私も教えられることが多くなりました。
それはご本人が草月流の華道を学んでいるからでしょうか、一般的な作品ではなく「自分の表現したい」という思いを込めた総じて変形のつぼの発想がおもしろいのです。
ただし大型作品になりますとどうしても重力が加わり、デザインと同時に作品自体の重量バランスをとるのがが大変難しくなります。従って私にとっても(デザインを生かしつつ)「形をいかに整えるか」ということを研究するいい勉強になる、と感じています。

 Yさんをはじめ大型作品を制作する生徒にいつも厳しく指導していることを何点かお教えしましょう。

● 粘土の厚さは10~12mmに削ること
 大型で厚みがあると、重すぎて釉かけ後の窯詰め等が困難になり結果的に思ったような作品が焼けなくなります。
 そのために、仕上がりの厚みを12mm以下にすることを厳しく言っております。
 ※手にする器は「軽くしあげること」これは鉄則だと思います。
 例えば「抹茶碗」であれば、350g以下にすることと指導しています。
 それでは、どうすれば12mm以下の厚さにできるか?
 私は「針を割り箸に10mmや12mm分突起させ接着した」オリジナルの道具を作っております。
 それを実際作った作品の側面から突き刺します。
 つまりそれで「裏側から指先に針先がちょうど触れる」厚さが10mmや12mmとなる訳です。
 生徒によっては穴があくことを心配する人もいますが、素焼き後釉薬をかければ穴は埋まってしまいます。

● 日ごろから、表面の装飾を施すための紋様のアイディアを考えておくこと

● 自分の作品にかけた釉薬の種類、その時の焼き上がりの「出来、不出来」をきちんと記録すること
 
● 釉薬の作り方をしっかり頭に入れて覚えこむ努力をすること
 私が教えた釉薬の分量は、いちいちノートを見ないで、頭にたたきこむ努力をして欲しいと思います。
それこそカラオケを覚えるような感覚で日々そらんじていれば、自然に覚えるでしょう。
「伝統をふまえ新しい感覚の美しい作品をつくる」それが私の理想です。
そのために、陶芸教室では厳しいことも言いながら指導しています。
けれども、いつか陶芸展で大賞の授かることを夢見ながら、これからも頑張って熱心に勉強して欲しいと思っています。