少し古い話になりますが、卒業式の迫った2月、小学校6年生担任のM先生から「卒業記念に心のこもった手作りの品を子供達にプレゼントをしたいのですが焼物で何を作ったらいいでしょうか?」との相談を受けました。時間な余裕があれば珈琲カップ等でもいいのでしょうが、30数名の子供達の分を作るのも大変だし、それなら「手作りの金メダルは?」と提案しました。私がこれだけは1番だと胸を張って金メダルを胸にかけ喜ぶ子ども達の姿を想像したからです。

 従来の学校では「成績のいい人」が上位で縦並びの評価を受け、本来人間として一番大事な「埋もれているその人のよさ、持っている特技、能力」が陽の目を見ることなく卒業していきます。みんなが「自分の持っている誰にも負けないなにか」持っているのにもかかわらず、です。

 M先生は早速子供達に「誰にも負けないこれだけは自分が1番」ということを作文に書いてもらいました。かねておとなしい目立たない子、元気な子・・・それぞれが自信に満ちた、木登り、ピアノ、マラソン、朝起き等々を書いていて、作文を通じてひとりひとりをあらためて知ったそうです。

 先生は、子供達のために、校章入りのメダルを粘土で作り、裏にそれぞれの名前と特技1番を彫り焼き上げたのちに金のスプレーで仕上げました。
卒業式の当日、紅白のテープのかかった金メダルを一人一人の首にかけ、ほめてあげたそうです。それには、子どもはもちろんのこと親も、感激したそうです。また校長先生をはじめ並み居る皆さんからこのアイディアを高く評価され喜ばれたそうです。

それを聞いて私は、子ども達(もう大人になっているかもしれませんが)に自信や喜びが刻まれたことだろう、と思いました。
 どんな子ども達にも、可能性がある。教育者はそれこそを子ども達に教えてあげて欲しい、伝えてあげて欲しいと思います。
 M先生はその後、地方の校長先生となり陶芸を中心に地域の文化活動をがんばっています。