ぐい呑み、酒器、抹茶茶碗、湯のみ、片口鉢、作家 萩原啓蔵 の陶芸作品をご紹介しています。
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「 萩原啓蔵 」 に関する記事一覧


【ぐい呑み】 雪

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啓蔵ぐい呑み 雪

【050】「釉薬を重ねてかけるむずかしさ」

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たっぷりと幾重にも釉薬をかけ、重なった色合いの発色が出た作品は、深みと変化を味わえると思います。

『啓蔵虫喰いぐい呑み 宇宙』
は、特に、釉薬を重ねた中でも、技術的に難易度が高いものでしたが思いどおりに発色した作品です。(注1)
 この「釉薬を重ねてかける」というのは、大変手間がかかります。



雪釉

1度目の釉薬をかけ、それを完璧に乾かしてから2度目に違う種類の釉薬をかけます。そして、それもまた完璧に乾かして、やっと3度目の釉薬となります。
なによりも「完璧に乾かした上で」次の釉薬をかけませんと、窯で焼成後取り出してみると、どろどろになって水ぶくれができたり、はがれたり(欠落したり)してしまうのです。
同時に、性質の違った釉薬をたっぷりと、しかも厚く重ねるというのは、大変むずかしい作業でもあります。





虫喰い


けれども、たっぷりと釉薬をかけるからこそ「虫喰い(注2)」ができ、複数の種類の釉薬を重ねてかけてあるからこそ「深い発色」が出るのです。

私自身、これまで何度も失敗を繰り返しながらも、「私なりの美」を求めて試行錯誤をしてきました。
それだけに納得のできる作品ができると、本当に達成感があります。
そして、実際に作品を手にとっての(お買い上げ頂いたお客様から)感想を読むと、作家として本当にうれしく、感謝の気持ちでいっぱいになります。

 私のこの雑感をご覧になっているのは、(作品を)買って頂いた方だけではなく、陶芸に興味のある方、陶芸を勉強されている方も多いことでしょう。
もしも、そのような方々の参考になるのであれば、と思い、実際に失敗した作品(釉薬が欠落したものなど)をお分けします。

どんな感じになるのかなっているのかを実際に観察するだけでも、今後の陶芸や陶芸作品鑑賞に、なにかしらヒントになれば幸いです。



(注1)この作品は現在、販売終了。
(注2)ぼこっぼこっとあいた穴のこと


【ぐい呑み】最近の作品

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最近の作品を並べてみました。


啓蔵カイラギぐい呑み 蒼龍
啓蔵・虫喰釉湯のみ
啓蔵虫喰いぐい呑み 宇宙
啓蔵ぐい呑み 蒼岩肌
啓蔵カイラギぐい呑み 蒼だるま

【049】「啓蔵虫喰いぐい呑み 宇宙」(聞き書き)

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「宇宙」で使っている釉薬は、鹿児島のシラスをベースにしています。

また、青色の微妙な発色や変化を出すために、配合を変えた釉薬を3種類を使っています。

用意した釉薬は3回にわけてかけるのですが、1種類目の釉薬をかけた後、まる一日くらいかけてしっかり乾かし、そして次の釉薬をかけ、またしっかり乾かして、最後の釉薬をかける、作業をします。

この丁寧な作業が、深みのある発色を生み出すもとでもあります。
ところが、釉薬は(特に冬場は)なかなかしっかり乾きにくい、というのが難点です。
乾かすのが不十分だと、はがれおちてしまいます。
また発色のイメージを考えながら釉薬をかけても、窯出しするまではどんなふうに発色するのか、虫喰いができるのか、わかりません。


300img2008 でもこの「宇宙」は窯から出した瞬間に「手ごたえ」を感じました。

深みのある青、そんな色を出せたことに非常に満足しています。


昨年は野口さんのスペースシャトルで宇宙へ行きましたが、その時の「宇宙」を思い描いた作品です。
実は今、私も「宇宙」を手にとりながら話をしています。

この同じ「宇宙」を実際に手にとってご覧になった皆さんは、この「青」と「虫喰い」の肌をどんな風に感じるのだろう?と思います。
作家の思いが伝わるとうれしいのだが…とも思います。
私自身、何回も作品を眺めながらあらためて釉薬のパワーのようなものや発色の不思議を感じています。


【ぐい呑み】宇宙

【ぐい呑み】宇宙

【ぐい呑み】宇宙
今年は野口さんのスペースシャトルで宇宙へ行きましたが、啓蔵が「宇宙」をイメージした作品とのことです。
確かにハッブル宇宙望遠鏡でとらえた宇宙みたいです。
濃い藍と青のずっしりとした釉薬。それが織り成す紋様。
そして、虫喰い(釉薬の穴ぼこ)も美しいものです。

【ぐい呑み】【ぐい呑みを持つ掌】冬の雪

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【ぐい呑み】 南海 青いぐい呑み

672  啓蔵ぐい呑み 南海まるで南海の岩と海、というようなイメージのぐい呑み


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陶芸家雑感

ありがとう・ありがたやメールマガジンに連載中の「陶芸家雑感」ですが今月分を新しくUPいたしました。
今月の題は「初心者用ガラス貫入釉の使い方
ぜひご覧下さい。

【ぐい呑み】豊土華

【ぐい呑み】豊土華



なによりも土華にも似て、重厚で、趣きとあたたかみのある肌のぐい呑みです。



【043】K老人との出会い

10年ほど前になりますが20~30キロ離れた隣町から50ccのオートバイで当方を尋ねてみえたのがK老人です。
公民館で陶芸を勉強しているが使える釉薬が透明釉と黒色釉の2色しかないので、何とか自分の欲しい釉薬は出来ないものかと「ある場所から掘り出した土石」を持参してわざわざ見えたのです。

 K老人はかなりの年配にも似合わず、釉薬について熱心に質問され探究心旺盛で人の良さそうな感じでした。ですのでこちらも快く話しに乗り
「釉薬は土石だけでは作れないこと」「媒溶剤としての灰を作ることから始まり、
石灰(炭酸カルシウム)、バリウム、亜鉛華硅石、チタン、ベニガラ、酸化マンガン、酸化銅、酸化コバルト等色々な材料が必要だということ」
を説明しました。
その上で、どんな色のどんな釉薬が欲しいのか希望を聞いてこちらで試してみましょうと約束しました。



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さて、K老人の持参された土石2~3種の中には使えない土石もありましたがその中で私がもっとも注目したのが「水打(みずたれ)粘土」(水酸化鉄、又は、がね水とも言う)でした。

長石灰、ワラ灰、水打粘土を同量加えて試作した結果、釉薬が作品を「綺麗な飴色」に焼き上げました。

K老人も大変気に入り喜ばれ、その後、毎月定期的にその水打粘土を運んで来て下さるようになりました。

K老人は地元の土地をよく知っていてその粘土がたくさん出る場所を探せたものと思います。
 

 陶芸をやっている者の常識として敢えて私は水打粘土の出る場所を聞き出すことはいたしませんが、なかなかいい材料です。
その水打粘土を利用して黒、紺、空、柿色の釉薬の作り方、材料の配合方法などK老人に指導したのがきっかけで、その後定期的に持ってきて下さるようになったのです。
私のカイラギ作品の虫喰いなどはこの水打粘土が主原料になっています。

 その土地で見つけ出した材料で誰にも真似のできない、その人その土地ならではの特産品を創り出すのが私の夢なのです。
ひょんなことからのK老人との出会い…今後もお互い大事にしていきたいものです。



【酒器】土華 

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■土華

数年前にインターネットで偶然に『土華』を見つけ、以後啓蔵さんの世界に引き込まれました。

この度、念願の『土華』を手にすることが出来ました。

『土華』を実際に手にすると、その“力強さ”“迫力”“存在感”に圧倒させられます。
釉薬が融合した発色、土が流れたような模様、滴るような形、どれをとってもすばらしく、まさに釉薬が作り出した“芸術”
だと思います。

見る全ての角度において、いろいろな景色が感じられ、作品のほうからも何かを語ってくる様にも思います。
本当にすばらしく、持つことに喜びを感じる酒器(作品)の一つとなりました。

早々、冷酒を注ぎ一杯やりました。
片口酒器の利用は初めてですが、思っていたよりも器が軽く、手にしっくり馴染み、大変気に入っております。
大切に使わせていただきたいと思います。
啓蔵さん、有が田やさん本当にありがとうございます。
また、すばらしい作品を楽しみにしております。

(東京都 Y様)


(店長)土華のご感想をありがとうございました。(土華は、贈答用としてご注文頂くことが多いためなかなかご感想を頂く機会がございませんでした。)
土華は、かなり個性的な作品です。しかも、啓蔵がかなり気合を込めて作ったものですので、もう同じものが出ないかもしれません。それだけに、良さをわかって頂ける方に大切に使って頂けるのは本当にうれしく光栄なことだと感謝しております。

それから、重さについてはこちらにも書いてありますが、啓蔵なりのこだわりがあるのだと思います。
本当にありがとうございました。

【酒器】土華



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先日、巌といっしょに購入しました。
どちらも渋い作品であろう、と想像しましたが、巌が「静」であるならば、この土華は「動」だと思いました。しかもかなり荒々しくエネルギーが湧き出るような「動」ですね。こんな力強い「釉薬の流れ」を見たことがない。
すばらしいです。
手に入れられることができ、本当によかったと思いました。
(千葉県 T様)

(店長)
ありがとうございます。以前から陶器がお好きだとおっしゃっていらしたT様に、すばらしい作品とのご感想を頂けて本当に光栄です。
土華はのあの釉薬はかなりダイナミックでそして(たっぷりとかかっていることによって)ものすごいエネルギーのようなものを感じます。私もすばらしい作品だと思います。
どうかこれからもご愛用を頂けると幸いです。

【酒器】蒼雫

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酒器・蒼雫は思った以上に深く落ち着いた蒼で、 手にとるとなぜかほっとします。
月並みな表現しかできませんが、 青い海に砕け散る白い波の泡を思い起こさせます。

今までのカイラギのも日々愛用していますが、 また趣が違っていいですね~♪
泡盛は次の日に残らないし、口当たりもいいので、 本当に飲みすぎてしまいます。^^;
数ヶ月前まで息子(1歳4ヶ月)の授乳があり、 妊娠中から卒乳まではアルコールを一滴も飲まなかった反動でしょうか。(笑)

すっかりお酒に弱くなってしまいましたが、 子供が寝た後にダンナと一杯、というのが楽しみな今日この頃です。

(神奈川県 M様)>



(店長)泡盛をあの酒器で!すばらしいですねー。(と言っても私はあまりお酒が強くありませんので泡盛のような強いお酒は頂いたことがありません)^_^;
でも、おいしくそして味わって(お酒も器も)頂けたら本当にうれしいです。
M様のご夫婦での晩酌の風景が目に浮かんで私までほのぼの…としてしまいました。(^^)
本当にありがとうございました。

【042】貫入(かんにゅう)釉とピンピン音

300p1010006期待に胸を躍らせる窯出し。

窯の蓋を開けると熱気が顔に吹きかかってきます。窯の中の作品が生き物のように”ピンピン”と音をたてています。
これは作品が冷たい外気に急に触れ、素地と釉薬の膨張の差が起きて貫入(かんにゅう)が出始めた時の音なのです。
窯出し後も、数日(長いときにはもっと)わたってその貫入音が続きます。初めて経験なさる方はびっくりされることと思います。

 薩摩焼、栗田焼、相馬焼など亀裂がはいっていますが、この亀裂釉、柚子肌釉、カイラギ虫喰い…等、釉薬によって特殊な紋様となります。欠点転じて美点となす、と言ったところでしょうか。

この亀裂、貫入を創り出すのには実は様々の工夫があります。
第一に縮まない土を使用する、第二に釉薬を厚掛けする、ことですが、実際には、私の体験から申し上げると「耐火性が大きく、収縮の少ない素地」「ソーダ長石を釉薬に使用する」という点がポイントになると思います。

 ちなみにカイラギ釉については、私自身も毎回苦労しています。幾度か試験焼を繰り返し確認していても、いざ本番(本焼)では結果は全滅という事もたびたびです。それだけに思い通りに焼けたときには最高の喜びを味わいますが次に「同じ釉薬を同じ条件」で焼成してもうまくいかず失敗する…この繰り返しです。そのたびに何故?原因は?と考え、いろいろと分析をしています。
そしてこれが私の一生涯の研究課題なのだ、とも思っています。

同時に、私の思いを込めた「カイラギ作品」を実際に購入したり使ってくださっているたくさんの方々からの感想は、本当に励みになります。
(いつもFAXで拝見しています。)

最後に今回は「陶芸初心者の方でも楽しめる亀裂釉」をご紹介しましょう。
家庭での使用済みの空ビンのガラス破片を使って皿に装飾を施す手法です。
ビール瓶の「茶」、酒ウィスキー瓶の「緑」「青」、その他の色のガラスを別々に割砕いておき、水平の皿に模様に合わせて置くだけです。
この場合、必ず「乳濁釉」をかけた上にガラスを置きます。
(ただし立体の作品の場合は流れるためにできません。)
1100度で溶けますので、普通の窯の下段でも綺麗に焼けます。一度、試験をしてみてはいかがでしょうか。






【酒器】蒼雫

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啓蔵の酒器揃・蒼雫
蒼い緑色の肌に淡雪のような乳濁色の釉薬がひろがります。そしてそれは雫のようにも見えます。
また器によっては蒼というよりも碧がまざったような発色のものもあります。
不思議なものです。同じ釉薬で同じ炎にあたりながらも、それぞれ個性的な発色を見せています。そしてとても趣き深い肌をしています。
辛口の日本酒がひっと本当においしく頂けるのではないでしょうか。
日本酒もそして器も愛でながら。





【尺皿】漆黒の海

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黒地に白い波しぶきのような豪快なカイラギ。重厚な尺皿です。
料理をのせる皿というよりもできれば「飾り皿」としてお使い頂けたらと思います。
景色の良い大皿を作ってみたい、という思いがありました。 力強い作品にしあがったと思います。

※景色とは:器をみたときの印象。現れた窯変(ようへん)や釉薬(ゆうやく)によって描かれる全体像。




・ 啓蔵が「陶芸家雑感」でこの作品に使われている「ユズ黒釉」ついて記しています。




【酒器】土華

【酒器】土華
側面にぼこっぼこっと穴があいているように見えるところがあるでしょう。これを「虫くい」と言います。

釉薬が共に剥がれて下の胎土があらわになった、まるで虫に食われたような痕です。

これはなかなか出ない、けれども昔から陶器が好きな方にはこよなく愛されてきたものです。



 【酒器】土華 古(いにしえ)の茶人、そして陶器がお好きな方は器の見た目のことを「景色」と呼びます。

単なる「紋様」としてではなく、そこに「芸術」として「風景がひろがるような」イメージをとても大事にしていたからでしょう。

この、土華も、器としての「景色」もすばらしく、味があります。


 【酒器】土華


そして「のぎめ(粘性のある釉薬の流れたあと)」も趣き深いです。

のぎめの下にもきちんと柚子肌があります。
手間をかけて、何層にもいろいろな釉薬がかけられていることがわかると思います。









【039】踏まれても、根強くしのべ道芝の

「踏まれても、根強くしのべ道芝の、やがて花咲く春のくるらん」
こんな詩の一部を昔中学生の頃に覚えた記憶があります。

 今朝、窯出しをしてみて予想外の不出来にがっかりしてしまいました。ためいき混じりに上記の詩を口づさみ自分自身を慰めているところです。
何十年この道一筋に自分の求めている釉薬作りを目指していてもこの様に失敗の繰り返しです。
試験焼きには満足するもののいざ本番となるとなかなか思い通りにいかないものです。これでもかこれでもかと挑戦しているというのに。

けれども「好きこそものの上手なれ」と、すぐに「その過程を楽しむ」ように気持ちを切り換えるようにしています。「飽きもせず夢中になれること」があるのは、大変ですが逆に幸せなことかもしれません。
冷静に今回の失敗の原因を手繰ってみるとやはりありました。

バケツの中の釉薬の量が少なかったために、同じような配合の別の釉薬を追加で混ぜ合わせたことです。ちょっと考えただけでは信じられない微妙な加減が影響するのですね。
年末を控え、早くいい作品を仕上げたいと焦る気持ちがそういう結果を招いたのかもしれません。

釉薬は本当に面白いもので奥が深いと感じます。それだけに魅力的でもあります。
今回不出来だったとしても何回も配合を変えて「いつかきっといいもの」
を作り出してみせる。これからも試行錯誤をくりかえしながら、頑張りたいと思っています。

【036】シラスと釉薬

シラス 釉薬  火山の噴出物が数千年にわたり風化したのがシラスで鹿児島県の半分はそのシラスによって覆われています。

無尽蔵の火山噴出物を利用していろいろな物が作り出され未利用資源が次々と新しい商品に生まれ変わりつつあります。
特にシラスに含まれるシラスバルーン物質が研磨剤として広く使われ油よごれの磨き粉から日本が誇る光学レンズの研磨まで一役買っているのです。
そればかりか水に浮くセメント製品建築用の外装-塗料 人工宝石等々….研究が進んで陶芸でも釉薬を作るのにシラスを利用しております。
カイラギ、ユズ肌釉は勿論のことどんな色釉でも作り出せます。比重が軽くキメが細かくシラス単品でも釉薬に利用でき使い易いのが何よりです。

一例をあげますと
乳濁釉は 「長石30+土灰30+ワラ灰40」 が基本ですが 
シラス乳濁釉は 「シラス30+土灰20+ワラ灰40+骨灰10」 が良好です。

何故骨灰を入れるかというと、シラスの中に微量の黒浜(砂鉄)が入っているのでそのまま焼くと(1240度~1250度)黄味を帯びますが骨灰を入れることによってピンク色に発色させることができます。(ツヤ有り)

ツヤ消し釉の場合は 「シラス30+土灰30+カオリン30+硅石10」 で良いのですがより白く乳濁させたい場合には「亜鉛華」または「ジルコンチタン」などを4%くらい入れます。

溶材として「バリューム」「マグネシア」「亜鉛華」「石灰」等を変えることで発色が違ってきます。
釉薬の研究で試作品を作って比較しながら良いものを見つけ出している試行錯誤の毎日です。大変な作業ではありますが、新しい発見をするために没頭することは、充実した時間でもあります。
現在、めずらしい釉、カイラギ、虫喰い、ユズ肌等、納得できるサンプルは30種類ほどになりました。いつかこの釉薬を使った作品を発表したいと考えております。

乳濁釉虫喰い


【033】鹿児島の”黒”

黒

鹿児島の地場産品には「黒」が本当に多い。「黒砂糖」「黒酢」「黒牛」「黒豚」「黒糖焼酎」「黒ごま」「大島紬の泥染の黒」と、いずれもよそに誇れる産品ばかりで、黒潮が県土を洗う鹿児島はとても豊かな海の色でもあり円熟した色でもあるような気がします。

 そして伝統産業の焼き物の中にも「黒薩摩」「黒ヂョカ」をはじめとする多くの黒物があり、これらの釉薬も火山地帯から産出する資源から作り出されているのです。

 「シラス」と呼ばれる「火山から噴出した火山灰火山れきが200万年以前に堆積した」ものは南九州全体に分布しています。
「シラス」とは多くの穴を持ったガラスという意味で、穴の大きさは1ミリの百万分の1から千分の1ほどで電子顕微鏡でしか見ることができません。
最近では、新資源として価値あるものに変えようとしています。
建材や塗料、除菌フィルター、血液のろ過材等々….

 無尽蔵にあるシラスから陶芸用の釉薬も作れます。例えば白色のマットから緑、空(そら)、黒、赤、そば釉など。それらは、しっとりしたマット釉で、長く使用しなくても沈殿しにくい使い易い釉薬です。そして
実は私が研究しているカイラギ釉もこの材料がないと作れないのです。
この鹿児島の「自然の恵み」で名産の黒を作り出せたらと、これからも日々研究を続けていきたいと思っております。









Copyright © 2024 keizogallery (陶芸家 陶芸作家 萩原啓蔵)


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