中央地方を問わず、秋の美展が開かれており、すばらしい作品が私たちの目を楽しませてくれます。
家庭に飾るには大きすぎないか?例えば100号~200号(1号:はがき大)の絵画や、50cm各の大壷を出品する場合によく聞かれます。
これらは、美術展出品用として制作したもので、家庭に飾るとか売り物として作ったものではありません。
出品された作品は、美術展という大舞台でこれまでの努力成果を競う訳ですから、華やかな衣装を着け、おおきなステージでも映えるような化粧をして、審査に合格できるよう、一生懸命作るのです。
つまり、通常の制作とは違った形で「自己表現」「自己アピール」をする必要があると思います。
陶芸に関しては、審査の対象として「造形美」と「装飾美」があり、常に新しい感覚で創作しているか?ということがポイントとなります。
私は、かねがね生徒のみなさんには「他人に作れない作品を自分自身の発想で創作し、そして新しい発見をして欲しい。」と申しています。
もちろん、陶芸はする目的は、人それぞれに違うと思います。趣味程度で楽しむのもよいかと思います。
ただ、少なくとも私は生徒さんには、ある程度の技術を習得したら、厳しい道であっても挑戦することに意義を見出して欲しいと指導をしています。
それにしても1年に数回ある美展のため、売れもしない大作を10個20個と作るなんて…とおっしゃる方もいるかもしれません。
けれど、夢を持ってひたすら作りつづけ、自分なりの発想と表現にウデを磨くことは、すばらしいことではないでしょうか。
それは、陶芸に関心のない人にとっては、おかしく感じられることかもしれませんが本当に夢に突き進んでいる当事者にとっては、毎日の創作や、この充実した日々は、何物にも変えがたいものなのです。
2001.12.11 火曜日
芸術の秋を迎えました。
私の陶芸教室の生徒さん達も美術展出品に向けて多忙を極めております。
年間5~6回開催される県内の陶芸展に出品するとあって、毎年10点以上の大型作品制作に励んでおります。
先日、当地方の美展では、出品した6人全員が入選入賞を果たし、市長賞や奨励賞をも頂きました。
また別な美展で県知事賞に輝いた生徒さんもいます。やはり自分の指導している生徒さん達の活躍はうれしく、私自身にとっても励みになっております。
陶芸の指導者にはおおきく『伝統を重んじ、同じような手法を守る指導』と『毎回、新しい感覚を盛り込んだ造形装飾をめざす指導』と方針が分かれますが、私は後者の考え方です。
陶芸を指導するにあたり「同じような作品を何度も作る」のではなく「創造性豊かな、個性的で、決して人まねをしない取組み」が一番大切だと私は考えています。もちろん、そのためには、生徒さん達にも完成するまでにかなりの努力と忍耐をして頂く必要があります。
指導の一方で、私の方では、たくさんの種類の釉薬を用意をします。
制作する作品の模様釉薬の色調コントラストは、各人各様にも違いますので釉薬の種類が少ないと、みな同じように見えてしまうからです。
きびしい指導にも応えて、熱心に制作活動をしている生徒さん達のそれぞれの個性ある表現を、少しでもサポートできれば、と思っています。
「(陶芸展に)出品して賞を頂くのも目標のひとつだが、それは付加的なものにすぎない。
一番の目的は多くの人達に見てもらい感動を与えしばし立ち止まらせるくらいの光る作品を作って欲しい。」と強く願っています。
2001.10.03 水曜日
綿布や動物の皮を漂白することはごく当たり前に行われていますが、岩石の粉を漂白することは余り聞きません。
しかし陶芸の世界では自然の岩石の粉末をなんとか満足できる色彩に仕上げるために、試行錯誤をくりかえしている現状です。
工業的には鉄分を磁石で除去する方法と、もしくは強酸で洗浄して石灰で中和する方法が用いられています。
ただし、強酸を使用したあとの岩粉は残念ながら陶芸材料としては適合しなくなります。
先般、カイラギ釉を作り出したときにも岩石粉の漂白に大変苦労しました。
黒い石粉を白くするのに#80、#100、#120の目の篩(ふるい)でふるっても焼き上がりはダークグリーンとなってしまいます。
それでも当初は満足していましたが、そのうち、もっと白い色にできないものかと思いつづけた結果、遂に、漂白することを発見できたのです。
淡い卵色に発色するカイラギ。お茶のうつりもよく、満足しているところです。
2001.09.05 水曜日
先日、雨の日の夕方、かねてから目をつけていた砕石場に行くと、側溝から赤色の濁った水が流れていました。
流れに沿って登っていくと「立入禁止」になっていましたので、とりあえず水溜りの赤い泥水をビニール袋に入れて持ち帰りました。
漉網(こしあみ)を通して沈殿させ長石と半々の分量で混ぜて釉薬を作り、試験的に焼いてみたところ、予想以上の出来ばえに感激しました。
この石粉を基礎に「マグネシウム」「バリウム」「骨灰」「亜鉛華」などの培養剤を加え、配合を変えてみると7~8種類もの違った釉薬ができることがわかりました。
今まで1つの種類の原料で、これほどバリエーション豊かな色が出せるものはありませんでした。
それだけに、良い材料との出会い、探し出せたことは、陶芸をするものにとっては、最高の喜びです。
後日2tトラックで微石砕だけを求め保存していますが、原料に余裕があると日々の研究・実験が楽しくてしかたありません。
自分だけのオリジナル釉薬をつくり出すこと、そしてそれをもっと極めたい気持ちでいっぱいです。と同時に、正直な気持ちを申し上げると、当分誰にもこの「原料の場所」を教えたくありません。
でもこれが本当の気持ちではないかとも思います。
2001.07.07 土曜日
(前回に引き続き、カイラギ釉について)
新しい釉薬を作るには、自分の研究意欲を持ちつづけるだけでなく、努力や手間を惜しまないことだと思っています。また同時に、私を支えて協力してくれる、家族、友人、知人のおかげだと感謝しております。
私は地元のさまざまな土石(珪藻土)を捜し求めて「カイラギ釉」の研究を続けております。それは自然の恵みを受けられる地方だからこそできることなのかもしれません。
とは言うものの、原料の土石(珪藻土:けいそうど)を探し出した後、険しい山の斜面を登り下りして掘り出し、しかもそれを担いで車のある場所まで運んでくるのも一苦労です。
しかも、採集した土石を粉砕して、さらに何度も篩(ふるい)をかけて釉薬を精製していくまでの間に原料は半減してしまいます。
また、せっかく作ったバケツ一杯の釉薬を丸ごと捨てることも往往にしてあります。このように難儀して作った釉薬がいつもうまくできるとは限りません。日々、失敗とやり直しの繰り返しの毎日なのです。
けれども
「カイラギを作りたい。2001年までに完成させたい。」
という思いや目標が、私を支えてくれたような気がします。
現在、5,6種類の「カイラギ釉」ができ、ほぼ確実に「カイラギ」を再現できるまでになってきました。
今後も研究を重ね現在の釉を基本にして、あと5,6種類くらい「変わったカイラギ釉」を生み出すことが次の目標であり夢です。
ここ鹿児島県の古い窯元には、天目・ソバ釉・柿釉・アメ釉・イラホ・黒釉・ドンコ・ダカツ釉・・といった特殊なすばらしい釉薬があります。
けれども私は、まだ誰も手がけていない「カイラギ釉」にこだわり、作り出し続けたいと思っています。
2001.04.07 土曜日
カイラギとは「梅華皮」とも書き、釉のちぢれのことをこう呼びます。
ホームページでも説明してありますが、収縮しにくい粘土を使い、それで素焼きしたあとに、一番収縮しやすい釉薬を使って1250度で焼き、両者の収縮度の違いを利用してこまかい「ひび割れ」が出たもののことを言います。
カイラギに使う釉薬は、当地で産出される珪藻土を主原料にして、単味(一種類の意味)または二種類以上を混ぜ合わせて作り、発色させるのですが、これを確実に再現するために、これまでさまざまな研究をしてきました。
山頂から海辺までいろいろな場所にある珪藻土を掘り出してシラスと混合して実験してみると、面白いことに、産出する場所の違い、また、土をふるいわける時の「篩(ふるい)」のメッシュ(目の粗さ、細かさ)によっても、大きく発色が変化することを発見しました。
また、窯の中に置く位置(つまり温度差)によって、釉薬の「縮れ」や「はがれ」に大きく影響する事も、数年来の実験から発見したことです。
山の上から採取した土は窯の上部、海辺の土は下部に置いた方が、結果がよいようです。
このように少しずつながら、細かい積み重ねによって、序序にわかってくることが多くこれからますます実験の繰り返しが面白くなるような気がします。
新しい時代、私なりの研究・実験、そして創作・作陶を意欲的に続け『大事に持っていたい器』を生み出していくのが目標です。そしてそこに喜びや生きがいを見つけ「生涯現役」の日々を過ごしたいと思います。
2001.03.04 日曜日
以前に三宅島の方から「三宅島に降り積もる火山灰をなんとか陶芸に利用できないだろうか、というメールを頂きました。
桜島の火山灰と三宅島のそれとは成分も違うと思いますので、すぐにこれがあてはまるとは限りません。しかしながら、、少しでもお役にたてたら・・と思いました。
と言う事で今回は「厄介物の火山灰を有効利用するために」という視点で、私なり釉薬として利用できないものかと、桜島の火山灰で色々と実験した結果を記してみたいと思います。
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火山灰を利用して釉薬を作る場合
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(1)火山灰を「60-80メッシュ」くらいの粗さの「ふるい」にかけておく。
(2)・ペタライト(長石)を用意する。
・蛙目(ガイロメ)粘土を用意する。
※ガイロメ粘土は、粉末状になっており、通常の練られている粘土より耐火力があるという特徴が
あります。
(3) ・火山灰 60
・ペタライト 40
・ガイロメ粘土 20
上記の割合で混合する。
(4)(3)の割合で混合した粉を、適宜「フノリ」と練り合わせる。
※火山灰の場合、比重が重いので、普通の釉薬のように水で溶かすと沈殿してしまうため、
使えなくなってしまいます。
水の代わりに「フノリ」で練り合わせることにより、よく混ぜ合わせることができます。
(5)(4)でできた釉薬を、素焼きした作品に塗布し、焼成します。
焼成は(SK8:つまり1250℃程度)で行います。
ダークグリーンのしっとりとしたマット(つや消し)に焼きあがります。
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火山灰を粘土として利用する場合
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火山灰とガイロメ粘土を30:70の割合で混ぜ、800℃~850℃(楽焼程度の温度)で焼成しますと、
植木鉢程度のものはできます。 ※ただし、色は黒鼠色となります。
これも、ひとつの火山灰利用法として有効かもしれません。
2001.02.04 日曜日
鹿児島県一帯は、桜島火山の噴火によって流出した溶岩が風化した「シラス台地」といわれる白い土層が分布しております。
この「シラス」は、雨水を吸収すると崩れやすく、軟弱な土壌が度々災害を引き起こす欠点があり、厄介物とも言われております。
ところが近年、各分野でこの「シラス」を利用する研究がされており、例えば「塗料」「ガラスウール」「濾過(ろか)器材」など、さまざまな製品が作り出されています。
私もこの「シラス」を利用して陶芸用の釉薬を数種類作ってみました。
(後ほど、その作品はホームページでご紹介したいと思っております。)
地元ならではの素材を使い、味のある作品をといつも心がけております。
まだ研究の余地がありますが、未利用資源の宝物になるのではないかと大いに期待しています。
ちいさな努力の積み重ねで、まさに21世紀は創意工夫の時代になるように思いますし、同時に夢をふくらませております。
2001.01.19 金曜日
やきものの総称を「陶器」と言っていますが、その中には磁器と陶器があります。
陶芸家は、磁器のことを「石もの」、陶器のことを「土もの」と呼んでおります。
「(磁器)石もの」は陶石(硬い石の白い粉)、長石等の主原料で作られています。
産地では瀬戸、有田、九谷などが有名です。(もちろん、有田などでは現在は、磁器だけでなく陶器も作られていますので限定はできなくなっていますが。)
日常、一般的に使われている茶碗や湯のみは磁器がよく使われています。
(これらを「せともの」と呼ぶのも産地名の「瀬戸」からきています。)
反面、芸術作品としても整った美しさでいろいろなものが生み出されています。
「(陶器)土もの」は粘土(白色から黒色までと種類が多い)で作られ、うつわとしては、吸水性が高いために水が染み込みやすく、洗いにくく、においが付
きやすくピンと叩くと低い音がします。
とは言うものの、やわらかな暖かみがあり、各地で産出された粘土の特質によって異なった趣のある作品ができます。
私はこの「味わい」という意味では陶器の方が芸術性豊かなものがあると思っています。
一般的な磁器と陶器の特徴を述べましたが、例えば、志野焼に使われる志野土(しのつち)、薩摩焼によく使われる粟田粘土(あわたねんど)、仁清土(にんせいど)、などは、粘土自体も焼きあがりも白色となり、見分けがつきにくいのですが、これらは陶器です。
また「薄いものが磁器」とは限りません。土ものでも、極限までうすく作られたうつわもあります。(ただし、強度はありませんが。)
やはり微妙な違いに関しては、ひとめでわかりにくいかもしれません。
実際にご自分の手で土に親しみ、作品を作っていくことによって、五感で自然に分かるようになると思います。
2000.12.05 火曜日
陶芸をなさる方が最初によく使用するのが光沢があって溶けやすい「透明釉」でしょう。
「透明釉」の配合によって幾種類にも作ることが出来ます。その代表的なものをご紹介したいと思います。
・長石 80 ・長石 50 ・長石 50 ・長石 50
木灰 10 木灰 30 バリューム 30 タルク 10
わら灰 10 カオリン 10 石灰 5 石灰 10
珪石 10 カオリン 10 カオリン 10
珪石 5 珪石 20
※上記の基準の釉薬に「ベニガラ」、「銅」、「コバルト」、「マンガン」 を入れることによって「色釉」をつくることもできる。
【透明釉の注意点】
・粘土の色によって、焼き上がりが灰色になる場合がある。
・沈殿しやすい、密着が悪く塗布しにくい。
・2重掛け(一度透明釉を塗り、あとから色釉を塗る)時にはがれやすいことがあるので注意しましょう。
以上のことを考慮しながら、自分に適した釉薬を作ることが大事だと思います。
2000.11.05 日曜日